飲食店にとって、最も大切な仕事は何か。
それは、目の前のお客様に向き合い、 おいしい料理を届けること。
これは間違いありません。
ただ、その料理を作るために、 売上の30〜40%という大きなコストが 仕入れに使われています。
本来であれば、 この30〜40%をどう管理するかが、 店の利益を大きく左右するはずです。
しかし現実には、 仕入れの管理に十分な時間を割ける店は ほとんどありません。
本業があるから、仕入れは「任せる」しかない
飲食店の現場は、 本業だけで手一杯です。
接客、調理、スタッフ管理、衛生管理。 それだけでも一日が終わります。
その中で、 仕入れ先を比較し、 価格を見直し、 業者を検討する余裕は ほとんど残りません。
結果として、 多くの店は 「今の業者に任せておけば大丈夫だろう」 という判断になります。
言えば用意してくれる。 頼めば対応してくれる。 長年の付き合いがあるから、分かってくれている。
この「信頼」と「慣れ」が、 仕入れの管理を代替しているのが現実です。
その信頼は、間違いではない
誤解のないように書いておきたいのですが、 この関係性は、決して悪いものではありません。
業者もまた、 店に対して感謝を持ち、 できる限りのサポートをしています。
急な発注にも対応し、 欠品があれば代替品を提案し、 時には値引きにも応じる。
飲食店と業者の間には、 確かに信頼と呼べるものが存在しています。
ただ、信頼だけでは店は守れない
問題は、 その信頼が 「管理の代わり」になってしまっていることです。
仕入れを管理するということは、
・何を、いくらで買っているのかを把握すること ・他の選択肢と比較すること ・条件が妥当かどうかを判断すること
これらは本来、 信頼とは別の領域にある作業です。
しかし現場では、 信頼があるからこそ、 この作業が省略されてしまう。
「あの業者に任せているから大丈夫」 という安心感が、 管理しない理由になっている。
そしてその結果、 月に10万円、 場合によっては100万円単位の差が 気づかないまま積み上がっていきます。
「変えよう」と思っても、戻ってくる
興味深いのは、 多くの店が一度は 「見直そう」「変えよう」と考えることです。
原価が合わないと感じたとき。 他の店の話を聞いたとき。 利益が残らないと気づいたとき。
でも、その決意は長く続きません。
なぜか。
本業が忙しすぎるからです。
「変えよう」と思った翌日も、 朝から仕込みがあり、 ランチが始まり、 ディナーの準備に追われる。
その中で、 新しい業者を探し、 条件を比較し、 切り替えの手間を考えると、
「まあ、今のままでいいか」 「どこも大体同じだろう」
という結論に戻ります。
これは怠慢ではありません。 本業を優先した結果の、 合理的な判断でもあります。
もう一つの現実:毎日5〜7社が出入りしている
見落とされがちですが、 飲食店には毎日、 5社から7社の業者が出入りしています。
それぞれが紙の納品書を置いていく。
この光景は、 あまりにも日常的で、 誰も疑問に思いません。
しかし冷静に考えると、
・5〜7社それぞれと連絡を取り ・それぞれの納品書を確認し ・それぞれの請求を管理する
この作業自体が、 すでに大きなコストです。
それでも、 この構造が「普通」として 受け入れられている。
業者を変えるどころか、 今の状態を維持するだけでも これだけの負担がかかっている。
その認識すら、 現場では薄れてしまっています。
変えられないのは、意志の問題ではない
飲食店が業者を変えられない理由は、 やる気がないからでも、 判断力がないからでもありません。
・本業だけで限界を超えている ・信頼が管理の代替になっている ・比較する余裕も仕組みもない ・変えようと思っても、日常に引き戻される
この構造の中にいる限り、 「変える」という選択肢は 最初から存在していないに等しい。
そしてその間にも、 仕入れコストは静かに積み上がり続けています。
これは特定の店の話ではありません。
飲食店を運営する中で、 何度も目にしてきた、 ごく当たり前の風景です。

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