手書きやFAXを扱うシステムを作っていると、
「OCRの精度は何%ですか?」
と聞かれることがあります。
もちろん、
読み取り精度は重要です。
数字を間違えれば数量が変わりますし、
商品名を読み違えれば別の商品になってしまう。
精度が低くていいわけではありません。
ただ、実際の食材卸の現場を見ていると、
OCRの精度だけを追いかけても
問題は解決しないと感じるようになりました。
正確に読んでも、正解にならない注文がある
たとえば、
「サーモン 1」
と書いてあったとします。
OCRが100%正確に
「サーモン 1」と読み取った。
それでも仕事は終わりません。
サーモンにも、
産地、
規格、
冷凍・チルド、
フィレ・ロイン、
容量、
さまざまな違いがあります。
その店が普段買っている
「サーモン」がどの商品なのか。
数量の「1」は、
1本なのか、1kgなのか、1ケースなのか。
ここまで判断できなければ、
納品データにはなりません。
人間は、無意識に大量の情報を使っている
担当者は注文を見るとき、
注文書だけを見ているわけではありません。
過去の注文。
その店の商品傾向。
普段使う規格。
以前の会話。
価格帯。
納品履歴。
こうした情報を頭の中で組み合わせて、
「たぶん、これだ」
と判断しています。
長く働いている人ほど、
この判断は速くなります。
だから一見すると、
簡単な仕事に見えます。
しかし新人に同じことをやってもらうと、
急に難しくなる。
ここに、
属人化の正体があります。
だから、完全自動化だけを目指さない
もう一つ、
現場で重要だと感じていることがあります。
それは、
最初からすべてをAIに決めさせる必要はない
ということです。
候補を出す。
過去の履歴から
可能性の高い商品を表示する。
人が画面を見て、
最後に確認する。
間違っていれば修正する。
そして、その修正を次回に活かす。
この方が、
現場ではずっと現実的です。
「人をなくす」のではなく「人の判断を軽くする」
DXという言葉を使うと、
人を減らす、
完全自動化する、
という方向に話が行きがちです。
でも、私たちが実際に欲しかったのは
そういうものではありませんでした。
朝の限られた時間の中で、
何十件もの注文を処理するスタッフが、
毎回ゼロから考えなくていい。
過去を探さなくていい。
ベテランに聞かなくていい。
画面に出てきた結果を見て、
確認するだけで仕事が進む。
それだけでも、
現場は大きく変わります。
OCRは入口です。
本当に重要なのは、
その文字が何を意味するのかを
業務データにつなげること。
私たちは今、
その部分に一番時間を使っています。

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